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スタッフおすすめの本

「行くぞ!ロシナンテス : 日本発国際医療NGOの挑戦」川原尚行著 山川出版社 2015.5月発行

2024.07.24

タイトルの通り、「ロシナンテス」というNGO団体の活動を紹介している本です。著者の川原さんは、アフリカを中心に巡回診療を行う医師で、国内でも東日本大震災の復興支援に携わるなど、メディアで目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。ペシャワールで活動中に亡くなった同じく医師の中村哲さんは、大学の先輩です。

医師を目指したのは高い志があったに違いないと思いがちですが、何も考えていないどころか、医者なら高級車に乗れるなどという軽い動機だったそうです。

そんな川原さんの人生の転機となったのは、タンザニアの日本大使館に医師として派遣されたことでした。この時も深く考えず、海外旅行の経験もないのに、お金をもらえて海外暮しなんていいじゃないかくらいの気持ちだったようですが、ここで目の当たりにした現実に衝撃を受け、ロシナンテスを立ち上げます。

人は、日々自分の生活だけで余裕がありません。でも、1日のうち数秒でも、遠い知らない世界で苦しんでいる他人のことを考えてみてください。

川原さんも、聖人でもなく、特別な人でもありませんでした。

きっとあなたにもできることがあります。

人生で無駄なことはない。出会いや転機を大事にして生きていこうと思わせてくれる、これから医療の世界を目指す人にはもちろん、全ての人におすすめの1冊です。(YAJI)

(3階閲覧室 498/KaNa )

 

成瀬は天下を取りにいく(宮島未奈 著、新潮社、2023.3発行)

2024.06.28

本屋大賞一位で滋賀への聖地巡礼が増えているという話を耳にしたので手に取った。

主人公成瀬あかりは意志が強く、そのストレートさからちょっと変わり者と思われがちだが人を引き込んでいく魅力の持ち主である。成瀬とかかわる様々な人たちの目線から彼女が描かれていることが面白い。最初は友人島崎みゆきが語り、成瀬の人物像が本当によくわかる。京都のお隣である身近な滋賀の町を感じながら物語に入っていけるのもこの物語の魅力だ。わたしはミシガンという船に以前乗船したことがあり、とても良い思い出である。ミシガンが登場する場面はお気に入りのストーリーである。

「ジェンダー・クライム」天童荒太著, 文藝春秋, 2024.01

2024.03.28

重苦しい犯罪小説ですが、ページを捲るのがもどかしいくらいスピード感があり、一気に読み上げました。

あらすじは、猟奇殺人事件が発生し、強行犯係の鞍岡は本庁一課の志波と組み、被害者を調べます。被害者は三年前に起きた性犯罪事件の加害者家族でした。復讐を暗示するメッセージが残されていたことから、過去の事件を調べます。加害者が政界の有力者と関係があったため裁判にもならず、被害者と家族は崩壊していました。そして、新たに事件の関係者が殺害されます。二つの事件の被害者、加害者、それぞれの家族、捜査をする刑事たち。物語は進むにつれ、日本での様々なジェンダー格差を浮かびあがらせていきます。

「性犯罪」被害者は、性別、年齢に関係ありません。海外と比べ比較的「安全な日本」であっても多発し、告発や報道がされていますが氷山の一角です。必ずしも、加害者が判明し法の裁きが下されるわけでもなく、被害者やその家族が受けた心身のダメージは生涯消えることはありません。事件が明らかになるにつれ、登場人物たちの背景や不条理な現実が露わにされ、読み手である我々も考えるのです。「私は今まで、何ら疑問を感じなかった」と。

後味は良くありませんが、どこかさっぱりしたところを感じるのは著者の持ち味でしょうか。この本を通してそれぞれの立場で事件を考えてみてほしいです。

(KZ)

「ノンデザイナーズ・デザインブック」Robin William著,每日コミュニケーションズ,2004

2024.03.01

社会人になると突然いろんなことをやらなくてはいけなくなります。そんな仕事の一つが文書やポスターの作成。レイアウトの整った報告書、見栄えの良い社内外向けの広報等々、作成するものの内容は様々ですが、ちょっとしたデザイン性を求められます。いきなり作れと言われて何とか必死に作ってみるけれど、出来上がったものを見て感じる残念感。なんだかちょっとちがうなぁ。けれど、はっきり言ってポスター作成なんて全く得意ではない。何をどうすれば良くなるのかさっぱり分からない。色を変えてみたり、配置を変えたり、試行錯誤を繰り返す。何かの糸口を求めて本を何冊かめくってみても、色についての話は直感的すぎて説明を読んだだけではよく分からない。

そんな方はまずこの本を手にとってみてはいかがでしょうか。タイトルの通り、デザインを学んだことはないけれどデザインする必要のある人に向けた本です。デザインの世界では有名であるらしい4つの原則を分かりやすい実例で教えてくれます。説明を読みながら著者と一緒に例に取り組んでいるとだんだん楽しくなってきますよ。応用編のExtra tips & tricksは架空の会社の宣伝販促物を作るという設定で、著者が4つの原則を踏まえながら色々なチップスやトリックを披露してくれます。初心者には読みごたえありです。

著者も言っています。「知は力なり」。この本を読んだだけでデザイナーにはなれないけれど、自分の見る目は変わるでしょう。少しでも自分の作ったものを新しい方向に向けていくことが出来るようになるかもしれません。

「献立作りが面白くなる!組み合わせ自由3段式保育園の給食献立」 藤原勝子編,  群羊社 , 2019.2 , (食育カードブック ; 2)

2023.06.16

何気なく作っている毎日の食事。気がつけば、いつも似たような食事で「マンネリ化しているなぁ…」と気づいてモヤモヤ…。料理のレシピはスマホ片手に探してみれば色々と出てくるけど、栄養バランスはこれでよいのかな?と不安になっていたところに、見つけたのがこの本です。

三段式のカードブックの形で作られていて、「主菜」「副菜①」「副菜②」それぞれ30種のメニューがあり、それぞれを1品ずつ選んで好きに組み合わせると1日3品目の献立が、27000通りもできるという優れもの。メニューは4歳児ひとり分の分量で表示されているものの、2歳児向けにつくる場合の注意点も添え書きされていて、こまやかな気配りが素敵です。

もちろん、分量を増やせば大人向けにも使えますし、メニューには「応用ヒント」という形で、代替食材の記載もあるので、より一層レパートリーの幅が広がります。元々が保育園の給食向けの献立なので、作り方も簡単です。

同じシリーズで、アレルゲン7品目(卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば)不使用のメニュー本「組み合わせ自由3段式アレルゲン7品目除去保育園の給食献立 : 献立作りが楽になる!」 群羊社 , 2021.1 , (食育カードブック ; 4) も図書館に所蔵がありますので、ぜひ合わせて手に取って下さいね。(M.O.)

 

「人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた」 横川 良明[著], サンマーク出版, 2021年刊

2022.12.26

「人類にとって「推し」とは何なのか」イケメン俳優オタクの著者、横川良明氏が本気出して考えている本です。「私にとって「推し」とは何なのか」ではなく、人類規模で考えているわけですから、スケールが違います。とにかく「推し」がいる人生のすばらしさを熱く熱く語っています。

さて、ここで少し考えてみてください。みなさんにとって、「推し」とは何なのか。「推しなんていません!」なんて、寂しいことを言っちゃあいけません。胸に手を当てて、目を閉じて、自分の心に聞いてみるのです。…ドラマで気になっていたあの俳優さん、今話題のサッカー選手、まだ無名のお笑い芸人さん、幼稚園の頃から大好きなキャラクター、飼っているハムスターの小次郎…。ほら、あなたにだっていたでしょう、「推し」が。

思えば、「推し」のおかげで世界が広がったり、ご飯がおいしく感じられたり、バスが少々遅れたってへっちゃらだったり。「推し」が自分にとってどんな存在なのか、その答えは人それぞれだと思います。

果たして、人類にとって「推し」とは何なのか、横川氏が最後に辿り着いた答えとは!

それでは、横川氏の言葉をお借りして締め括らせていただきます。

「どうか今日もみなさんと、みなさんの推しが幸せでありますように。」(H)(3階閲覧室 772.1/YoYo)

流浪の月 凪良ゆう【著】 東京創元社

2022.05.09

2020年本屋大賞受賞作品。広瀬すず、松坂桃李といった豪華俳優陣で映像化されたことでも注目を集めています。

この作品を貫く大きなテーマは「ともに生きるということ」。自分自身に違和感を感じながら生きる青年・文と、家族を失った孤独な少女・更紗。2人は出会い、わずかな月日を過ごします。ただし周囲から見た彼らは、誘拐犯とその被害者、という許されない関係でした。

月日が流れ、ふたたび2人は巡り会います。すでにたくさん傷つけられて大人になった彼らは、一緒に過ごした思い出を唯一の拠りどころとして、心のなかで大切にし続けました。文とともに生きることを望む更紗は、何度も「これは恋ではない」と自分に言い聞かせますが、やがてその想いは、すべてを敵に回してでも彼を守りたいというものに変わっていきます。しかしそれは「愛」という言葉で表せるほど単純なものでもありませんでした。彼女はその気持ちを次のような言葉で語ります。

「わたしがわたしでいるために、なくてはならないもの、みたいな」

自分が自分であるために、どんな困難からも逃げない更紗の態度からは、人を想う気持ちの裏側にある、危うさのようなものを読み取ることが出来ます。時にそれは、常識や思いやりで成り立つわたしたちの優しい世界を一瞬で飛び越え、破壊してしまうような側面も併せ持ちます。心の底から誰かを大切にするには、自分や相手のなかの負の部分も互いに引き受けていく深い覚悟が必要なのかも知れません。

現在進行形で恋愛中の人にも、まだまだ全然興味ないよ!という人にも、是非手に取って、誰かと「ともに生きるということ」について思いを巡らせてもらいたい一冊です。<high>

(3階閲覧室)

 

「金春屋ゴメス」 西條奈加[著]  2F文庫コーナー

2021.11.26

先頃、直木賞を受賞した西條奈加さんのデビュー作で2005年「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作です。

時は近未来、電気もない昔日の江戸時代のまんま、独立宣言をした領地ができた。厳しい審査を受けなければ住むことも渡ることもできない鎖国“江戸国”。洋服や電気製品は持ち込めず、名前も古式ゆかしき‘和名’に改名です。主人公の辰次郎は江戸生まれの大学生。当時流行していた「鬼赤痢」という病が原因で幼い頃に両親に連れられ「日本」に渡った経歴を持ちます。長崎奉行の下っ端として働き始めますが、「鬼赤痢」の原因を探るために呼び寄せられたのです。

何よりも、近未来でありながら「独立国家宣言をした上に鎖国」した「江戸」という設定がウケました。登場人物も、印象的なのですが、最も癖がキツいのはやはり奉行である「親分」でしょう。インパクトの強い容貌、頭脳明晰でキョーレツでパワフルな性格(笑)で周囲の人間から非常に恐れられながらも、信頼され愛されています。笑いも(ココ重要!)謎解き要素もたっぷりの作品です。続編も所蔵していますので、ぜひご一読ください。西條さんは多作で、現代から時代小説と幅広いジャンルの小説を発表されていますが、涙なしには読めない物から軽妙なものまで、読みやすいのでぜひ他作品も読んでほしいです。

「いつか別れる。でもそれは今日ではない」 F[著] KADOKAWA, 2017.4刊

2021.06.14

この本を手に取ったきっかけは、私が信頼しているSNSアカウントの女性が、このF氏の文章を絶賛されていたからです。彼女が綴る文章が大好きなこともあり(メインはコスメアカウントなのですが、本や某韓国アイドルなど多彩に語っておられます)、そのお薦めなら確かだろう、と。

タイトルからすでに反応してしまいませんか?パケ買いならぬタイトル買い。このように心をくすぐる文章が、この本にはあちこちに溢れています。みなさんくらいの年齢なら、相当に心を撃ち抜かれるのではないでしょうか。かつて大学生だった私も、なんでこんなにわかるの?と読みながら不思議で仕方ありませんでした。きっかけをくれた彼女の文章もそうなのですか、物事の本質を的確に表現していて、決して自分では言葉にできない、けれど確かにあるものを「こうだよね」とやさしく教えてくれているようです。だから響くのでしょう。

一編が長くても5ページくらいで気軽に手を出せるのも魅力です。気になったところだけ読むのもあり。パッと開いたところを読んでみて、その日のアドバイスとして受け取ってみるのもいいかもしれません。(P)

(3階閲覧室)

「絵に隠された記憶」 一色さゆり[著], 宝島社, 2019.5発行

2020.09.26

著者が京都府出身で「このミステリーがすごい」大賞を受賞されたのもあり、また本の表紙やタイトルに惹かれ興味を持ち手に取って読んでみました。

絵を描いたり造形をしたりしてその作品から心の問題を解きカウンセリングする熊沢アート診療所。カウンセラーを目指す院生・日向聡子(主人公)はインターンシップとしてやってきました。

絵画療法の第一人者熊沢が、様々な悩みをもつ人々の過去や本心を彼らが描いた絵から見抜いていく。そして聡子はある患者に対する熊沢の助言をきっかけに自分の少女時代の記憶に疑念を持ち始める…。

まさに絵画ミステリーであり、今まで読んだミステリー小説の中で一番面白い小説だったのでオススメです。一度読んで見てください。(sun) (2F文庫コーナー)

「日本人の9割が間違える英語表現100」キャサリン・A・クラフト[著] ;          里中哲彦編訳, 筑摩書房, 2017年発行

2020.06.09

「英語を話せるようになりたい」なら、短い瞬間英作文をたくさんすると良いそうです。

“電車が遅れてる”“今日は雨だって”“昨日観た映画面白かった”など、普段自分が家族や友達・職場の同僚と話す何気ない日常会話の一言を英語で話す練習です。とはいえ、すぐには多くの例は思いつきません。短文がたくさん載っている本はないかなと思っていた時に見つけたのがこの本です。
この本には100個の題材が載っています。見開き1頁を1つの題材に当て、左頁に日本人が考えそうなフレーズ、右頁にネイティブが言いそうなフレーズをそれぞれ例示・解説しています。つい言っしまいそうな例が多くて、なるほどと思ったり、この単語でこんなことが言えるんだと驚いたりしました。分かったような分からないようなで見逃していた英語の知識を整理するのに役立つ本だと思います。
最初から読む必要も、全部を読む必要もありません。気になるフレーズだけ見るというつまみ食いのような読み方で大丈夫。難しい単語を使っているわけではないので、勉強としてではなく、気軽に読むことができる一冊です。 (n) 837.8 S / CrKa (3階閲覧室)


「赤ちゃんのいる食卓」 加藤美由紀 [著] 集英社be文庫,  2002年刊行

2020.02.03

著者は食いしん坊で美味しいものをいつも食べたくて、広告会社を28歳でやめて料理家の道を目指しました。ところが、仕事に燃えていた彼女は足を骨折し、リハビリも兼ねてロンドンに行き、彼と出会うと何と3日でプロポーズされて結婚!その後、出産した赤ちゃんが1歳8か月になるまでの生活が書かれています。
1人の女性としての悩みや喜びが書かれていてドキドキ心配したり、ワクワクしたりします。料理家(今は料理研究家?)としての知恵を絞って頑張る様子、心理的・肉体的なさまざまな体験(切迫流産入院)、妊婦さん向けや簡単おかずのメニューなど色々な場面で役立ちそうです。また、赤ちゃん用と一緒に作れるメニューがあったり、身体に優しいメニューがあったりと、これは大人や老年者も食べられそうです。「麦茶のゼリー」や「すいかとトマトの寒天」は今年の夏に絶対作ってみたいです。
39才で出産して大変な著者が、赤ちゃんとともに明るくたくましいお母さんになっていく様子は読んでいてとっても楽しく、最後は心がすっきり爽やかになりました。レシピだけでも使える!本ですので、ぜひ手に取って見てください。(R)

 

 

 

 

「いちばんわかりやすいかぎ針編みの基礎BOOK」 かんのなおみ監修 成美堂出版 2008.10

2019.11.29

母は割と何でも作れてしまう人で、小物や鞄、服まで作ってくれます。長年、母作のアクリルたわしを愛用していたのですが、私も編み物に挑戦してみることにしました。動画を見ながら編んでみると、思っていたより難しい。何度もわからなくなってほどいてはまた編んでと繰り返し、ようやく完成させたら編み物が楽しくなりました。
他の物も作ってみたい!と色んな本を開いたものの、動画と違って編み図を見てもさっぱりわからない…。なんとか簡単なものに挑戦してみたけれど、見本のようにはできません。じゃあ別の本!と「いちばんわかりやすい」本を借りたら上手くできました。最初に作ったものは鍋敷きサイズだったので、別の針や糸を買ってリベンジしたら可愛いコースターができあがりました。そして、もう少し難しい小物入れも完成!
「とりあえず完成させる」ことが大事だと思いました。わからなくてもわからないなりに作っていると「あ、こういう意味なのかも」というのが何となくわかってきて、次に作る時にはより見本に近い物ができるようになって、また他の物も作ってみたくなる。新しい趣味ができました。次は何を作ろうかなぁ。(t)

3階閲覧室所蔵(請求記号 594.3 S/ICHI)

「人生はZoo(ずー)っと楽しい!-毎日がとことん楽しくなる65の方法 」 水野敬也,長沼直樹(著) 文響社,2014年

2019.10.15

「本を読む」という行為は私にとっては、「物語を読む」という事でした。しかしながら、図鑑を幼少期から好きで読んでいた学生や、若いころ英語の辞書を毎日読んでいたという教授の話を聞いて、「本を読む」ことには様々なスタイルがあると実感しました。

この本はリラックスして読める本です。65ページ分それぞれに動物の写真と生きる上で「大切なこと」が書かれ、裏面にはそれに係る偉人のエピソードや名言が載っています。動物の自然な姿にほっとしたり、興味あることばと動物の世界を楽しんだりできます。偉人たちのエピソードは知らないことが多く、気になることばは自分に問いかけるように、つい声を出して読んでしまいました。好きなページを見るだけでもOK。疲れた夜にささやかな幸せと癒しを与えてもらえる一冊です。(scarlett)

「干し野菜のおいしいレシピ」 本谷惠津子(著)  家の光協会 2008年

2019.07.31

よく「健康を維持するために野菜をしっかり採りましょう」と言われますが、1日350gの野菜を食べるのって結構大変だし、料理もマンネリ化するから難しいなぁ…と思っていたら「こんな本があるよ」と知人から紹介されたのがこの本です。
ドライフルーツと同様に野菜も干して食べようという事なのですが、この本のよいところは、「切りたて」「ちょっぴり干し」「しっかり干し」の区別がつくように写真が掲載されているところですね。
ちょうど以前から利用していた乾物屋さんがなくなって、砂糖の使用されていないドライミニトマトが手に入らなくなったので、実際に試してみたら「あら?おいしい…」。
料理本なので、干し野菜の作り方についての記述は少ないものの、眼から鱗のレシピがいっぱいあってレパートリーの幅が広がりました。
野菜不足に悩んでいる方や野菜料理の幅を広げたいと思っている方に是非読んで頂きたい一冊です。(M.O.)

「異なり記念日」 齋藤陽道(著) 医学書院 2018

2019.06.20

このタイトルの意味は何だろう?と気になって読んでみました。 著者はろう者であり、写真新世紀優秀賞を受賞した写真家です。この本は著者から見た日々の記録です。 著者は聴者の家庭で育ち、「日本語」(日本語対応手話)の教育を受けて育っています。奥さんはろう者の写真家で、ろう者の家庭で育ち「日本手話」を身につけています。「日本語」と「日本手話」の別の言語(手話)を使う二人が結婚して聴者の子どもを授かり、「異なる」三人の暮らしが始まりました。違った視点から日々を過ごしている家族それぞれの姿に考えさせられます。 私は難聴でこの著者と同じような環境で育ちましたので、とても共感を覚え懐かしくもありました。写真家の著書らしく、多くの写真が掲載されていることもこの本の魅力です。ぜひ読んでみて下さい。(C)

「蜜蜂と遠雷」 恩田陸(著)  幻冬社 (2017年直木賞、本屋大賞作品)

2019.06.20

この作品は国際ピアノコンクールの舞台で4人の若き演奏者たちがそれぞれの人生をかけて、競い合うストーリー。予選から本選に至るまでを臨場感ある表現力で描いている。 ピアノを持っていないが抜群のセンスを持つ16歳の自然児、母の死でピアノが弾けなくなった20歳の元天才少女、完璧な演奏技術を持つアメリカの名門音楽大学19歳男子学生、音大出身で、妻子もいる28歳サラリーマン。コンクール参加にいたるまで、ピアノを通しての様々な人生がある。 この作品でのもう一つの主役が音楽である。ピアノの音色をこれほどまでに言葉で表現できるのか。流れてもいない音楽が本から聞こえてきて、著者が浜松国際ピアノコンクールを4回取材して書き上げた大作であることがうなずける。 ピアノ曲を知らない人が読んでも面白いと思うが、知っていればさらに楽しめる 作品。幼いころに習った練習曲が登場する場面は特に情景を実感することが できた。旋律とともに本を読み進めていく楽しさがある。クライマックスの 本選曲は知らない曲ばかりで、一度聴いてみたくなった。 (Scarlet)

 

地震イツモノート:キモチの防災マニュアル  地震イツモプロジェクト(編) ポプラ社  2010年

2019.04.02

この本を見つけたとき「これだ!」と思いました。普段考えないといけないと思いつつ後回しにしている防災について考える事の大切さ、社会人として一人ひとりが考えることが書かれています。近年は地球温暖化で、自然環境が不安定となり、毎年世界各地で災害が起こっています。もともと、日本は火山帯の上にあり、歴史的にも地震が起こりやすい国です。また、自然が豊かですが、豊かであるということは自然とうまく付き合い自然環境を安定させる必要があります。近代化のなかで人間も自然の一部であることを感じる機会が減ってきています。この本を読んで、地球で生きることについて考え、いざというときに困らない心の持ち方(スキル)を身に着けてください。
まだ(・・)大丈夫(・・・)ではなく、“いつか”起こるかもしれない時に慌てずに、自分もまわりの人も助けるためには何が必要かを常に意識して考えることを知ってください。この本は阪神・淡路大震災を経験した人たちの気持ちと、「デキルこと」(体験した人の工夫)がイラストと一緒に書かれていて、楽しく学べる1冊です。また、ライフラインが止まった時や普段からこうしておけばいいんだ!という身近な知恵が一杯詰まっています。一度、皆さんの身の回りの暮らしを見直してみませんか。(R)

 

 

日日是好日 : 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

2018.12.06

この本はフリーのルポライターである著者が、仕事とは別に25年間続けているお茶について書いたエッセイです。私はいつか、どこかのおうちでお茶などを点てていただく機会があった時のために、ほんのちょっとだけ習ったことがある程度の、本当の門外漢です。そんな私でも、とても感動して読むことが出来ました。あまりに感動してしまったので、お茶のお稽古を長く続けている義妹に1冊余分に買って「すんごく良いから、読んでみー」と押し付けてしまったほどです。この本は「お茶」について語っているだけでなく、著者の人生そのものについて語られているのです。
著者の母親に「お辞儀が違う。タダモノじゃない」と言わしめた、お茶の先生は出過ぎたところがなく、ふんわりとしていて、上品で、気配りが行き届いている素晴らしい人物です。最初は、「お茶」の「形を作ってから心を入れる」やりかたに、「そんなの形式主義だわ」と著者は反発を覚えました。いろいろな疑問を先生から言葉で説明してもらいたかったのですが、いつの間にか「頭で考えなくてもスッスッと勝手に手が動いていくことに」びっくりしたり、和菓子より「ケーキのほうがいい」はずだったのに、先生が「ひとっ走り」して取り揃えて下さる色とりどりの和菓子の、美味しさ・美しさに目覚めたりしていきます。この先生に巡り会えたことも、著者の幸せなのかな、と思いました。
黒木華さん主演で映画化もされており、樹木希林さんが先生役で出演されています。こちらは、季節の移ろいが美しい映像となっていて、気持ちが洗われるようでした。(I)

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「いけちゃんとぼく」 西原理恵子(著) 角川文庫 2011

2018.07.26

いけちゃんとは? 物語の最後に正体はわかるのだが、「そうだったのか!」とすっきりするような感じではなかった。物語全体を包む、どこかふんわりとした正体だったけれど、予想外の正体に驚き、涙ぐんでしまった。
主人公は小学生の「ぼく」。いつも「いけちゃん」が側にいる。いけちゃんが何ものか、はわからない。丸くて、小さくなったり大きくなったり、増殖したりする。ぼくを包んでくれるやさしいいけちゃんもいれば、悪いことをそそのかすいけちゃんもいる。だから、これは子どものころにあった、自分だけの神様のような存在で、世界の怖いものや、つらいものから身を守る術として存在しているのかなと思った。それだと、この物語はただのありふれた物語になってしまっていただろう。いけちゃんの言葉には、「いけちゃん」のぼくへの想いがそっと寄りそっている。
男の子は駆け抜けるように大きくなるという。いけちゃんはそんな小学生のぼくをずっと見守っている。夏をひとつ過ごすたびに、ぼくは少しずつ大人になる。今までできなかったことができて、大丈夫なことが増えていく。正体がわかってから読み直すと、いけちゃんのその時々の言葉がまた心に沁みる。
あなたの周りの男の子も、いつかの夏に気がつかないうちに駆け抜けて今の場所にいるのかもしれない。その時、この「ぼく」のことを少し思い出してみてほしい。(P)
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「人生を変える話し方の授業」 北平純子(著) 中経出版 2011

2018.05.29

大人数の前で話すのが苦手でどうしてもあがってしまう、また誤解されやすい話し方になってしまうので直したいと思っていた時に、目についたのがこの本でした。タイトルには半信半疑でしたが、話し方を変えたことで人生が好転した実話や、話し方が劇的に上達するポイントが紹介されており、読んでいるうちにタイトルの意味を理解することができました。いくつかのポイントの中で大きな声を出すことが挙げられていますが、あるバレーボール部の顧問からキャプテン選びの条件として「技術の上手、下手は関係なく声が大きい、一人ひとりに声を掛けチームを引っ張ってくれる面を持っていること」と聞いた事があり納得しました。また、人前であがらないのはてっきり才能なんだなと思っていましたが、話し方を練習することによってあがらないコツを身につける方法があるなど、なるほどと頷く事ばかりでした。大きな声を出すのが苦手な人や上手く話をまとめられないと思っている人におすすめできる本です。是非読んでみてください。(C)
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「八朔の雪-みをつくし料理帖」高田郁著 ハルキ文庫(角川書店) 2009

2018.03.23

主人公の澪は、十八歳のおっとり癒し系女子。大坂で洪水により目前で両親を亡くし、天涯孤独だったが縁あって一流料亭に下働きとして引き取られ、味覚の鋭さを認められ料理人として修業をしていました。ところが、店が延焼により焼失。江戸に出店している亭主夫婦の息子を頼って夫婦と共に江戸に来たものの、店は無く息子も行方不明。亭主は心労により亡くなり、母とも慕う女将、芳と二人残されます。そこを、澪に早世した一人娘の面影を見た蕎麦屋「つるや」の亭主種市に雇われ働くことになります。店を任されることになり、閉店も覚悟するほど振るわなかった「つるや」も、澪の頑張りや周囲の人々の尽力により江戸で評判の店になります。店をつぶそうと卑怯な嫌がらせを繰り返すライバル店、料理のファンなのにツンデレな戯作者、何かと助けてくれるお医者様、歯は無くとも百戦錬磨の老いた看板娘、澪を慕う下働きの少女、そして、恋しい人、大事な親友…。おっとりしている澪の料理に対する情熱と、これでもかと降りかかる艱難辛苦に涙が止まりません。何よりも料理が美味しそうで食べたくなります。作中の料理は作者が実際に調理したもので、レシピが巻末に付いているので自分で作ることができます。江戸と上方の風習の違いが書かれていて、澪だけでなく読み手も驚くばかりです。時代小説に慣れない人にも読みやすい文章で、時にユーモラスに物語は進みます。「時代小説って難しい…」と考えすぎずに、普段手にしないジャンルもどんどんチャレンジしてみてください。そして、涙もろい人は号泣必至なので個室でお読みくださいませ。(KZ)

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「しゃばけ」 畠中恵[著] 新潮文庫 2014.4

2018.01.25

変なタイトルですが、名誉・利得などの様々な欲望にとらわれる心という意味があります。この本は江戸を舞台に超身体の弱い若だんながいろんな事件に巻き込まれていく話で、話のなかに人の様々な感情や想いがちりばめられています。主人公(一太郎)は筋金入りに身体が弱く、その上人間と妖狐のクオーターで妖が見え、心配した祖母の妖狐が仁吉(白沢)・佐助(犬神)を送り込みます。2人は普段人間の姿で店の仕事をしていますが、若だんなのことになれば全てを後回しに飛んでいきます。大人になれるかわからないと言われても病と闘いながら、若だんなは真直ぐに生きようとします。また周りの人々や弱いものを救おうとして奔走して寝つき、仁吉に叱られ、苦い薬を飲みます。言葉遣いが江戸弁でわかりにくいですが、わかる言葉を読み進めていくうちに引き込まれてしまいます。ドキドキひやひやしたり、ちょっと怖かったり、こんな馬鹿なこと!と呆れたりするジャパニーズファンタジーです。シリーズが進むにつれ、若だんなは友人を持ち、恋も経験して、病と闘いながら、成長していきます。気に入れば、続編も読んでみてください。(R)

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「身近な妖怪ハンドブック」 川村易, OSAmoon著 文一総合出版 2012

2018.01.18

「妖怪」と言われて何を思い浮かべますか?河童やサトリ、一反木綿など、映画やドラマ、アニメなどでお馴染みの妖怪たちもこの本で紹介されています。
「あ、知ってる!」という妖怪も多かったけれど、聞いたことのない妖怪もたくさん居ました。中でも一番気になったのは「ぬっぺふほふ」。これ、呼びにくいですよね?のっぺらぼうの一種だそうです。言われてみればどことなく響きが似ていますね。出会った人は「あ!ぬっぺふほふだ!」とか言っていたのでしょうか。
私なら噛みそう・・・。
「身近な」妖怪ということで、出会えるならいつか会ってみたいと思うのは獏と猫又かな。獏は悪い夢を食べてくれるから。きっと良い妖怪。猫又は、しっぽが二つってなんか良いですよね。年を取った猫が変容するから賢そうだし。「本土狐」の項目に含まれていた妖狐も気になる。九尾の狐とか、すごくしっぽがもふもふしてそう。撫でたい!
「発見身近な妖怪」として紹介されている写真も楽しめます。気軽に読めるサイズな
のでぜひ手に取ってみてください。(t)
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