図書館からのお知らせ

「道なき道を行け : A Pathfinder」藤田浩之著 小学館, 2013.10

2015.01.20

藤田浩之さんってご存知ですか?私はこの本を読むまで藤田さんの事を知りませんでした。アメリカのクリーブランドでCEQという医療機器開発メーカーのCEOとして活躍され、米国商務省顧問、クリーブランド財団理事などに就任し、大統領の「一般教書演説」に日本人では初めて招待された方です。藤田氏は、「仁義」と「人として正しい生き方をしよう」という経営に対する信念を持ち、金儲けのためではなく、自分の能力がどれだけ社会に還元できるかという考えで、起業されました。「人生を歩むときは、ドーナツの穴を見るのではなく、ドーナツを見よ」これは、著者の心が湿った気持ちに支配された時に、クリーブランドで父親のような存在のラトナー氏から言われた言葉です。簡単に説明すると、ドーナツの穴の大小にかかわらず、目の前にあるものに対して感謝の心を持ちなさいと言う事です。経営者だけでなく、多くの方に人生の参考になる一冊だと思います。(M)

 

「神様」 川上弘美著 中央公論新社,2001.10

2015.01.20

kamisama.png

この作品は、不思議な「生き物」たちとのやさしくせつない9つの短編集です。その中でも特に心に残った、くまが登場する最初と最後の短編を紹介します。
最初の短編「神様」は、三つとなりに引っ越して来たくまと、散歩に出かけるお話。くまは、人間のように礼儀正しいけれど、川に飛び込み魚をとったりオレンジの皮をこっそり食べたり、くまらしい一面も見せます。散歩の終わりには、抱擁を交わし、和やかでほのぼのとした一日を過ごします。
最後の短編「草上の昼食」では、もうすぐ故郷に帰るくまと、ふたたび散歩に出かけます。人間の世界になじみきれずに帰ってしまうくま。主人公はその気持ちを察しながらも、何も言うことができない。できることは、熊の神様と人間の神様、それぞれの神様に相手の幸せを祈ることでした。家族や友達でも、相手の気持ちをすべて理解することはむずかしいです。けれど、決して重なり合うことはできなくても、主人公とくまのように互いにそっと寄り添い、幸せを祈ることはできるのではないか、と思わせてくれる一冊でした。  (A)