図書館からのお知らせ

「異なり記念日」 齋藤陽道(著) 医学書院 2018

2019.06.20

このタイトルの意味は何だろう?と気になって読んでみました。 著者はろう者であり、写真新世紀優秀賞を受賞した写真家です。この本は著者から見た日々の記録です。 著者は聴者の家庭で育ち、「日本語」(日本語対応手話)の教育を受けて育っています。奥さんはろう者の写真家で、ろう者の家庭で育ち「日本手話」を身につけています。「日本語」と「日本手話」の別の言語(手話)を使う二人が結婚して聴者の子どもを授かり、「異なる」三人の暮らしが始まりました。違った視点から日々を過ごしている家族それぞれの姿に考えさせられます。 私は難聴でこの著者と同じような環境で育ちましたので、とても共感を覚え懐かしくもありました。写真家の著書らしく、多くの写真が掲載されていることもこの本の魅力です。ぜひ読んでみて下さい。(C)

「蜜蜂と遠雷」 恩田陸(著)  幻冬社 (2017年直木賞、本屋大賞作品)

2019.06.20

この作品は国際ピアノコンクールの舞台で4人の若き演奏者たちがそれぞれの人生をかけて、競い合うストーリー。予選から本選に至るまでを臨場感ある表現力で描いている。 ピアノを持っていないが抜群のセンスを持つ16歳の自然児、母の死でピアノが弾けなくなった20歳の元天才少女、完璧な演奏技術を持つアメリカの名門音楽大学19歳男子学生、音大出身で、妻子もいる28歳サラリーマン。コンクール参加にいたるまで、ピアノを通しての様々な人生がある。 この作品でのもう一つの主役が音楽である。ピアノの音色をこれほどまでに言葉で表現できるのか。流れてもいない音楽が本から聞こえてきて、著者が浜松国際ピアノコンクールを4回取材して書き上げた大作であることがうなずける。 ピアノ曲を知らない人が読んでも面白いと思うが、知っていればさらに楽しめる 作品。幼いころに習った練習曲が登場する場面は特に情景を実感することが できた。旋律とともに本を読み進めていく楽しさがある。クライマックスの 本選曲は知らない曲ばかりで、一度聴いてみたくなった。 (Scarlet)