『神田川デイズ』豊島ミホ [著] 角川文庫 2010.11 2階文庫コーナー
2013.02.01
豊島ミホが描く、大学生の青春短編集です。青春ものというと、さわやかな話というイメージが強いと思いますが、この本に出てくる主人公たちは、「ひたすらかっこ悪い」「どん詰まり」の青春を送っています。
六畳一間の下宿で、みかんの汁が飛んだコタツでうだうだとしたり、流されるままサークルに入ったものの、馴染みきれなくて自分を見失ったり、軽いことがカッコいいと思い込んで、結果的に情けない恋をしたり、友達のいないまま4年間を終えようとしていたり。それでもこの作品は間違いなく「青春」の物語です。誰しもどこかで少しは感じたことがあるであろう感情が直球に描かれており、胸を突きます。
また、作者自身の経験から、夜間学部に通っているという設定が多いのもこの短編集の特徴です。そして作品ごとのタイトルも、短い言葉の中に大きな世界観を感じさせてくれて、とても素晴らしいです。この作品を手に取った際には、是非そちらのほうにも注目してみてください。 (A)