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「神様」 川上弘美著 中央公論新社,2001.10

2015.01.20

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この作品は、不思議な「生き物」たちとのやさしくせつない9つの短編集です。その中でも特に心に残った、くまが登場する最初と最後の短編を紹介します。
最初の短編「神様」は、三つとなりに引っ越して来たくまと、散歩に出かけるお話。くまは、人間のように礼儀正しいけれど、川に飛び込み魚をとったりオレンジの皮をこっそり食べたり、くまらしい一面も見せます。散歩の終わりには、抱擁を交わし、和やかでほのぼのとした一日を過ごします。
最後の短編「草上の昼食」では、もうすぐ故郷に帰るくまと、ふたたび散歩に出かけます。人間の世界になじみきれずに帰ってしまうくま。主人公はその気持ちを察しながらも、何も言うことができない。できることは、熊の神様と人間の神様、それぞれの神様に相手の幸せを祈ることでした。家族や友達でも、相手の気持ちをすべて理解することはむずかしいです。けれど、決して重なり合うことはできなくても、主人公とくまのように互いにそっと寄り添い、幸せを祈ることはできるのではないか、と思わせてくれる一冊でした。  (A)

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