「行くぞ!ロシナンテス : 日本発国際医療NGOの挑戦」川原尚行著 山川出版社 2015.5月発行 2024.07.24 タイトルの通り、「ロシナンテス」というNGO団体の活動を紹介している本です。著者の川原さんは、アフリカを中心に巡回診療を行う医師で、国内でも東日本大震災の復興支援に携わるなど、メディアで目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。ペシャワールで活動中に亡くなった同じく医師の中村哲さんは、大学の先輩です。 医師を目指したのは高い志があったに違いないと思いがちですが、何も考えていないどころか、医者なら高級車に乗れるなどという軽い動機だったそうです。 そんな川原さんの人生の転機となったのは、タンザニアの日本大使館に医師として派遣されたことでした。この時も深く考えず、海外旅行の経験もないのに、お金をもらえて海外暮しなんていいじゃないかくらいの気持ちだったようですが、ここで目の当たりにした現実に衝撃を受け、ロシナンテスを立ち上げます。 人は、日々自分の生活だけで余裕がありません。でも、1日のうち数秒でも、遠い知らない世界で苦しんでいる他人のことを考えてみてください。 川原さんも、聖人でもなく、特別な人でもありませんでした。 きっとあなたにもできることがあります。 人生で無駄なことはない。出会いや転機を大事にして生きていこうと思わせてくれる、これから医療の世界を目指す人にはもちろん、全ての人におすすめの1冊です。(YAJI) (3階閲覧室 498/KaNa ) カテゴリー:スタッフおすすめの本
成瀬は天下を取りにいく(宮島未奈 著、新潮社、2023.3発行) 2024.06.28 本屋大賞一位で滋賀への聖地巡礼が増えているという話を耳にしたので手に取った。 主人公成瀬あかりは意志が強く、そのストレートさからちょっと変わり者と思われがちだが人を引き込んでいく魅力の持ち主である。成瀬とかかわる様々な人たちの目線から彼女が描かれていることが面白い。最初は友人島崎みゆきが語り、成瀬の人物像が本当によくわかる。京都のお隣である身近な滋賀の町を感じながら物語に入っていけるのもこの物語の魅力だ。わたしはミシガンという船に以前乗船したことがあり、とても良い思い出である。ミシガンが登場する場面はお気に入りのストーリーである。 カテゴリー:スタッフおすすめの本
4月から土曜日開館時間(変更)について 2024.04.05 4月より、土曜日の開館時間が以下の通りに変更します。 土曜日 通常開館時間 10:30 – 15:30 ※状況によっては変更する場合もありますので、随時開館予定でご確認ください。 カテゴリー:お知らせ
「ジェンダー・クライム」天童荒太著, 文藝春秋, 2024.01 2024.03.28 重苦しい犯罪小説ですが、ページを捲るのがもどかしいくらいスピード感があり、一気に読み上げました。 あらすじは、猟奇殺人事件が発生し、強行犯係の鞍岡は本庁一課の志波と組み、被害者を調べます。被害者は三年前に起きた性犯罪事件の加害者家族でした。復讐を暗示するメッセージが残されていたことから、過去の事件を調べます。加害者が政界の有力者と関係があったため裁判にもならず、被害者と家族は崩壊していました。そして、新たに事件の関係者が殺害されます。二つの事件の被害者、加害者、それぞれの家族、捜査をする刑事たち。物語は進むにつれ、日本での様々なジェンダー格差を浮かびあがらせていきます。 「性犯罪」被害者は、性別、年齢に関係ありません。海外と比べ比較的「安全な日本」であっても多発し、告発や報道がされていますが氷山の一角です。必ずしも、加害者が判明し法の裁きが下されるわけでもなく、被害者やその家族が受けた心身のダメージは生涯消えることはありません。事件が明らかになるにつれ、登場人物たちの背景や不条理な現実が露わにされ、読み手である我々も考えるのです。「私は今まで、何ら疑問を感じなかった」と。 後味は良くありませんが、どこかさっぱりしたところを感じるのは著者の持ち味でしょうか。この本を通してそれぞれの立場で事件を考えてみてほしいです。 (KZ) カテゴリー:スタッフおすすめの本
「ノンデザイナーズ・デザインブック」Robin William著,每日コミュニケーションズ,2004 2024.03.01 社会人になると突然いろんなことをやらなくてはいけなくなります。そんな仕事の一つが文書やポスターの作成。レイアウトの整った報告書、見栄えの良い社内外向けの広報等々、作成するものの内容は様々ですが、ちょっとしたデザイン性を求められます。いきなり作れと言われて何とか必死に作ってみるけれど、出来上がったものを見て感じる残念感。なんだかちょっとちがうなぁ。けれど、はっきり言ってポスター作成なんて全く得意ではない。何をどうすれば良くなるのかさっぱり分からない。色を変えてみたり、配置を変えたり、試行錯誤を繰り返す。何かの糸口を求めて本を何冊かめくってみても、色についての話は直感的すぎて説明を読んだだけではよく分からない。 そんな方はまずこの本を手にとってみてはいかがでしょうか。タイトルの通り、デザインを学んだことはないけれどデザインする必要のある人に向けた本です。デザインの世界では有名であるらしい4つの原則を分かりやすい実例で教えてくれます。説明を読みながら著者と一緒に例に取り組んでいるとだんだん楽しくなってきますよ。応用編のExtra tips & tricksは架空の会社の宣伝販促物を作るという設定で、著者が4つの原則を踏まえながら色々なチップスやトリックを披露してくれます。初心者には読みごたえありです。 著者も言っています。「知は力なり」。この本を読んだだけでデザイナーにはなれないけれど、自分の見る目は変わるでしょう。少しでも自分の作ったものを新しい方向に向けていくことが出来るようになるかもしれません。 カテゴリー:スタッフおすすめの本
「献立作りが面白くなる!組み合わせ自由3段式保育園の給食献立」 藤原勝子編, 群羊社 , 2019.2 , (食育カードブック ; 2) 2023.06.16 何気なく作っている毎日の食事。気がつけば、いつも似たような食事で「マンネリ化しているなぁ…」と気づいてモヤモヤ…。料理のレシピはスマホ片手に探してみれば色々と出てくるけど、栄養バランスはこれでよいのかな?と不安になっていたところに、見つけたのがこの本です。 三段式のカードブックの形で作られていて、「主菜」「副菜①」「副菜②」それぞれ30種のメニューがあり、それぞれを1品ずつ選んで好きに組み合わせると1日3品目の献立が、27000通りもできるという優れもの。メニューは4歳児ひとり分の分量で表示されているものの、2歳児向けにつくる場合の注意点も添え書きされていて、こまやかな気配りが素敵です。 もちろん、分量を増やせば大人向けにも使えますし、メニューには「応用ヒント」という形で、代替食材の記載もあるので、より一層レパートリーの幅が広がります。元々が保育園の給食向けの献立なので、作り方も簡単です。 同じシリーズで、アレルゲン7品目(卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば)不使用のメニュー本「組み合わせ自由3段式アレルゲン7品目除去保育園の給食献立 : 献立作りが楽になる!」 群羊社 , 2021.1 , (食育カードブック ; 4) も図書館に所蔵がありますので、ぜひ合わせて手に取って下さいね。(M.O.) カテゴリー:スタッフおすすめの本
「人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた」 横川 良明[著], サンマーク出版, 2021年刊 2022.12.26 「人類にとって「推し」とは何なのか」イケメン俳優オタクの著者、横川良明氏が本気出して考えている本です。「私にとって「推し」とは何なのか」ではなく、人類規模で考えているわけですから、スケールが違います。とにかく「推し」がいる人生のすばらしさを熱く熱く語っています。 さて、ここで少し考えてみてください。みなさんにとって、「推し」とは何なのか。「推しなんていません!」なんて、寂しいことを言っちゃあいけません。胸に手を当てて、目を閉じて、自分の心に聞いてみるのです。…ドラマで気になっていたあの俳優さん、今話題のサッカー選手、まだ無名のお笑い芸人さん、幼稚園の頃から大好きなキャラクター、飼っているハムスターの小次郎…。ほら、あなたにだっていたでしょう、「推し」が。 思えば、「推し」のおかげで世界が広がったり、ご飯がおいしく感じられたり、バスが少々遅れたってへっちゃらだったり。「推し」が自分にとってどんな存在なのか、その答えは人それぞれだと思います。 果たして、人類にとって「推し」とは何なのか、横川氏が最後に辿り着いた答えとは! それでは、横川氏の言葉をお借りして締め括らせていただきます。 「どうか今日もみなさんと、みなさんの推しが幸せでありますように。」(H)(3階閲覧室 772.1/YoYo) カテゴリー:スタッフおすすめの本
流浪の月 凪良ゆう【著】 東京創元社 2022.05.09 2020年本屋大賞受賞作品。広瀬すず、松坂桃李といった豪華俳優陣で映像化されたことでも注目を集めています。 この作品を貫く大きなテーマは「ともに生きるということ」。自分自身に違和感を感じながら生きる青年・文と、家族を失った孤独な少女・更紗。2人は出会い、わずかな月日を過ごします。ただし周囲から見た彼らは、誘拐犯とその被害者、という許されない関係でした。 月日が流れ、ふたたび2人は巡り会います。すでにたくさん傷つけられて大人になった彼らは、一緒に過ごした思い出を唯一の拠りどころとして、心のなかで大切にし続けました。文とともに生きることを望む更紗は、何度も「これは恋ではない」と自分に言い聞かせますが、やがてその想いは、すべてを敵に回してでも彼を守りたいというものに変わっていきます。しかしそれは「愛」という言葉で表せるほど単純なものでもありませんでした。彼女はその気持ちを次のような言葉で語ります。 「わたしがわたしでいるために、なくてはならないもの、みたいな」 自分が自分であるために、どんな困難からも逃げない更紗の態度からは、人を想う気持ちの裏側にある、危うさのようなものを読み取ることが出来ます。時にそれは、常識や思いやりで成り立つわたしたちの優しい世界を一瞬で飛び越え、破壊してしまうような側面も併せ持ちます。心の底から誰かを大切にするには、自分や相手のなかの負の部分も互いに引き受けていく深い覚悟が必要なのかも知れません。 現在進行形で恋愛中の人にも、まだまだ全然興味ないよ!という人にも、是非手に取って、誰かと「ともに生きるということ」について思いを巡らせてもらいたい一冊です。<high> (3階閲覧室) カテゴリー:スタッフおすすめの本