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『長さではない命の豊かさ』 日野原重明著 朝日文庫 2007 2階文庫コーナー

2011.07.22

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この本は聖路加国際病院理事長である著者の新聞連載をまとめた『あるがまま行く』(1995年刊) を文庫化したもの。著者自身が「お釈迦様の生・老・病・死の人生を私なりのなまのことばで書きためてきました」というように、「生み、育てる」「学ぶ」「愛する」「習慣を身につける」「働く」「老いる」「人を治す」「死ぬ」というテーマにまとめられている。著者は、近代医学に全人的医療の基礎を遺したウィリアム・オスラー医師を心の師とした。「習慣が人間の心と体を作る」をオスラー医師の論文に見つけ、「成人病」を「生活習慣病」と改め、血圧を測らせることで住民自らが減塩食の勉強をはじめ、脳卒中死亡と医療費の低下につながった。また、日本の救急医療やナイチンゲールの「自分が経験したことのない病気であっても病人の抱える苦しみや悲しみを感知できる感性が何よりも必要な職業だ」という看護人の心得などにも触れている。自身も病院のいたるところに酸素吸入装置や吸引用の配管を埋め込み、毛布、マットレスを引けば治療にあたれるようにしており、1995年の地下鉄サリン事件では多くの命を救った。連載は今も続き、著者が経験し感じたことを友人に話すように語りかけてくれている。(N)

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