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「蜜蜂と遠雷」 恩田陸(著)  幻冬社 (2017年直木賞、本屋大賞作品)

2019.06.20

この作品は国際ピアノコンクールの舞台で4人の若き演奏者たちがそれぞれの人生をかけて、競い合うストーリー。予選から本選に至るまでを臨場感ある表現力で描いている。 ピアノを持っていないが抜群のセンスを持つ16歳の自然児、母の死でピアノが弾けなくなった20歳の元天才少女、完璧な演奏技術を持つアメリカの名門音楽大学19歳男子学生、音大出身で、妻子もいる28歳サラリーマン。コンクール参加にいたるまで、ピアノを通しての様々な人生がある。 この作品でのもう一つの主役が音楽である。ピアノの音色をこれほどまでに言葉で表現できるのか。流れてもいない音楽が本から聞こえてきて、著者が浜松国際ピアノコンクールを4回取材して書き上げた大作であることがうなずける。 ピアノ曲を知らない人が読んでも面白いと思うが、知っていればさらに楽しめる 作品。幼いころに習った練習曲が登場する場面は特に情景を実感することが できた。旋律とともに本を読み進めていく楽しさがある。クライマックスの 本選曲は知らない曲ばかりで、一度聴いてみたくなった。 (Scarlet)