「金春屋ゴメス」 西條奈加[著] 2F文庫コーナー
2021.11.26
先頃、直木賞を受賞した西條奈加さんのデビュー作で2005年「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作です。
時は近未来、電気もない昔日の江戸時代のまんま、独立宣言をした領地ができた。厳しい審査を受けなければ住むことも渡ることもできない鎖国“江戸国”。洋服や電気製品は持ち込めず、名前も古式ゆかしき‘和名’に改名です。主人公の辰次郎は江戸生まれの大学生。当時流行していた「鬼赤痢」という病が原因で幼い頃に両親に連れられ「日本」に渡った経歴を持ちます。長崎奉行の下っ端として働き始めますが、「鬼赤痢」の原因を探るために呼び寄せられたのです。
何よりも、近未来でありながら「独立国家宣言をした上に鎖国」した「江戸」という設定がウケました。登場人物も、印象的なのですが、最も癖がキツいのはやはり奉行である「親分」でしょう。インパクトの強い容貌、頭脳明晰でキョーレツでパワフルな性格(笑)で周囲の人間から非常に恐れられながらも、信頼され愛されています。笑いも(ココ重要!)謎解き要素もたっぷりの作品です。続編も所蔵していますので、ぜひご一読ください。西條さんは多作で、現代から時代小説と幅広いジャンルの小説を発表されていますが、涙なしには読めない物から軽妙なものまで、読みやすいのでぜひ他作品も読んでほしいです。