大江戸食べ物歳時記 (新潮文庫な-80-1)永山久夫著 新潮社 2013.5
2015.05.15
今、和食がブームである。この本からは江戸の食事情や歳時記を通して和食文化を知ることができる。江戸時代も文化・文政の頃になると食文化は飛躍的に発展する。江戸など一部の都市部で食されていた白米飯は羽釜を使ったかまど炊き。江戸時代の人は今よりおいしいご飯を食べていたそうである。
「おかず」という言葉が生まれ「一汁三菜」が定着したのもこのころである。江戸の人が食べていた卵かけごはんも土用のうなぎも今に受け継がれているが、それだけではない。春には花見、潮干狩り、秋にはキノコ狩りなどを楽しみ、正月、お盆など季節ごとに旬の食べ物をとりながら、健康的な食事法をすでに実行していたのである。たとえば料理の基本である日本の「だし」には、体や脳の老化を防ぐ成分が含まれている。また、黒い食べ物(黒ごま、黒豆、黒砂糖など)に含まれている抗酸化物質で夏バテを防止し、「百薬の毒を解する」(薬の副作用を防ぐ)ために味噌汁を飲んでいた。和食文化はユネスコの文化遺産に登録されたが、食生活を通して先人の知識、知恵にふれることができる1冊である。(N)